書評『ハーバード・ビジネス・レビュー2017年5月号』

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はじめに

ハーバード・ビジネス・レビューの2017年5月号特集は「知性を問う」。人間は人工知能とどう接していくべきなのか、問題提起となるとても良い特集記事でした。

その中で、朝井リョウさんのインタビュー「小説は何者が生み出すのか」がとても面白かったので、紹介してみたいと思います。

概要

朝井さんのインタビューには「作家の創造性の原点を探る」という副題がついており、小説を創造するという点において、人間(作家)とAIの違いを軸に話が進められていきます。

王道のパターンと作家性

インタビューでとても納得したのは、次の3点です。

その1

AIでもいわゆる王道のストーリー展開(doksyo-tekは寅さんや水戸黄門ドラえもんのような長生きをしているコンテンツを想起しました)は作ることができるが、作家が文章に込める「発見」や「気づき」(こういう作家の世界観が顕著にあらわれるのはエッセイだそうです)は最もAIから遠いところにあるものだ、という部分。

p50

弱い者が強い者をあっと言わせる、というようなゴールを定められる作品であれば、その出口に行きつくまでのプロットはAIに任せられるような気がします。

p51

こうした「パターン」「プロット」「あらすじ」を出すことは、AIのほうが得意なのではないでしょうか。

 その2

作家は、AI(≒AIの文章生成技術)と創作の仕事を奪い合うのではなく、例えばAIは様々なシーンを生成し、作家はそれらを自分の世界観に基づいて選択的に活用する、といった住み分けが可能だという部分。

p51

小説の世界において、AIと人間は、けっしてバーサスの関係ではありません。

~略~

むしろ、時間的な制限で諦めてきた選択肢を吟味することができるようになるのではないかと、僕はプラスにとらえています。

その3

決定的なのは創作をする意思があるか否かという点。人間には意思があり、AIには意思がない。

p57

本を書く一番の動機か、作者の意志にある。いまのところ、人間とAIの間にある決定的な差は、その意志なのではないかと思っています。

 朝井さんは「機械音痴でテクノロジーはよくわかりません」というスタンスを示していますが、人工知能の現状をとてもよく理解しており、かつ、どう利用するのがもっとも効果的か、さらにAIは意思を持たないという点で決定的に人間と異なるという本質も見抜かれていると思いました。

所感

朝井さんのインタビューから見えてきた「作家の創造性」。これは小説家に限らず、日々クリエイティブに暮らしている我々人間(クリエイティブ、とはデザイナーとかそういう方々を指しているわけではありません。日々、料理を作ったり、趣味に興じたり、週末どう過ごそうかと考えたり、そのような所作ひとつひとつがクリエイティブなのです)にも十分当てはまることだと思います。

最近だと、AIに仕事を奪われてしまうという文脈の話をよく見聞きしますが、それよりもむしろ、AIと人間の違い(意思のありなし)を考慮して、どう使えば仕事や活動が楽しくなるかを考える方がいいのだと思います。

参考

ということで、朝井リョウさんのテクノロジーについて考える本。

ままならないから私とあなた

ままならないから私とあなた

 

インタビュー中にも出てくる以下の本も読みたいです。

コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか

コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか

 

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